『おれがナミちゃんを守るんだ! あの、極悪ゾロから。よし、イケイケ・ゴーゴー・根性〜!』 ナミちゃんのリボン (2004年チョッパー誕生日企画) おれの名前は、トニー・トニー・チョッパー。おれがまだおもちゃ屋にいた頃に、ヒルルク店長がつけてくれた名前なんだ、カッコイイだろ? でも、それはおもちゃ屋にいた頃の名前で、いまは別にチョパタって名前があるんだ! その名前はナミちゃんがつけてくれたんだけど、そのナミちゃんはいま中学校に行ってる。おれも一度学校とやらに行ってみたいな……ゾロのやつもいるってナミちゃん言ってたけど……おれがいなくて大丈夫なんだろうか? とっても心配だよ。 あ、ゾロってのはナミちゃんと同級生の男子なんだ。たとえ男子――子供でも、おれのナミちゃんに手を出したら許さないんだからな! 覚えとけよ、ゾロ。……ってあいつもいま学校だもんな。よかった、この場にいなくて。首絞められるところだった……あぶない、あぶない。 いまおれがいる場所はおもちゃ屋じゃなくて、ナミちゃんの部屋のベットの上。おもちゃ屋にいたときに、ナミちゃんのお母さんがナミちゃんのために、ってプレゼントしたのがこの家に来ることになったきっかけなんだ。 「えっへへ……おっと、いけない。あまり声だしたらお母さんに気づかれるな……気をつけないと……」 おれはナミちゃんの小さいときを写したアルバムをめくってたんだけど、小さいナミちゃんのあまりの可愛さに、つい声あげちゃった。 ナミちゃんのお母さんは小説家で家にいるから声を出すと気づかれる可能性があるんだ。でも。いざって時には人形のふりもできるから大丈夫! ……たぶん。 あ。 ダメダメ。もし人間におれがしゃべれるって気づかれたらナミちゃんともしゃべれなくなる! ……それにしてもカワイイな、へへ。 どうしておれがしゃべれるかって言うと…… ちょうど一週間前だったかな。 あの日ナミちゃんは好きな人に振られたんだっけ。 「ねェ……チョパタ。どうして先輩の好きな人がお姉ちゃんなのかな? ゲンさん好きだったのに、ねェ? チョパタはどう思う?」 「…………」 ナミちゃんの問いかけに、おれは無言。 ナミちゃんはフーっと溜息をついて 「……ってチョパタはぬいぐるみだし、話せないよね。あ〜あ話せるといいのに」 目に涙をためて話すナミちゃんに、その時のおれは話しかけるどころか、身動き一つできなかったんだ。 『そんなことないよ! ナミちゃんの話は全部聞こえてるんだ……話せないだけで。……おれが話せたら、ナミちゃんの話相手になるのに』 そう大声でナミちゃんに言えたらどんなによかったか。 悔しかったんだ。 ナミちゃんが泣いているのに、めったに泣かないナミちゃんが。 動けないおれはじーっと無言で見つめることしかできなかった。 でも、そんな時ナミちゃんに話しかける声が聞こえたんだ! 「こんばんは」 「…………」 「こんばんは〜って、言葉が通じないのかしら?」 「…………な、な、どうして人? それにどうやって入ったの、ここ2階なのよ?」 ナミちゃんの前に現れたのは、水色の髪をポニーテールにまとめている女の子だった。 ま、実際には窓から足をブラブラさせて笑ってたんだけど。手にはほうきを持ってて、ドレスを着ていた。 顔は一重まぶたにマツゲの長さが可愛らしさを強調している。 間の抜けたしゃべり方のあどけない少女。 驚くナミちゃんをよそに、くつくつと突然現れた女の子は笑ったんだ。 「なんだ、言葉が通じるじゃないですか、よかった」 「よくない! あなた、どこから入ってきたの? ……まさかドロボウ……」 「ち、違いますよ。私は魔法使いです。ビビっていいます。ま、実際は……」 ポニーテールの女の子の言葉をさえぎって、ナミちゃんがうろんげな目で 「さ、警察に電話、電話〜。おまわりさ〜ん、ヘンタイがでました〜」 それに女の子は慌ててこう言ったんだ。 「ご、ごめんなさい! 怪しいものじゃないんです。お願いです、話を聞いてください。そうしないと私……試験に落ちるんです」 「試験?」 試験という言葉にナミちゃんが反応したんだ。テストはナミちゃん嫌いじゃないけど、面倒なんだって、ウッヘヘ。 試験っていう言葉に反応してナミちゃんが、ビビっていう自称魔法使いの話をきくことにした。 ◇◆◇ 「なるほど。ビビは魔法の国の王女で、王族は一人前になるための試験をしてるってわけね。その一人前だと認められる試験が自分がつくったマジック・アイテム≠人間に渡して、その成果を魔法の国の人達が見る。そういうこと?」 「ええ、その通りです」 こくこくと嬉しそうに頷くビビ王女。 目には涙まで浮かべてる。よほど理解してもらえたことが嬉しかったんだと思うよ。 要点だけを話しただけだったんだけど、ビビ王女の予想以上にナミちゃんの頭の回転が良かったから、話はトントン拍子に進んだんだ。 「で、これがそのマジック・アイテム?」 「はい、大変だったんですよ、これ。開発途中でよく魔力が暴走しましたし」 「これが? っていうか、そんな怪しいもの押し付けないでよ」 「あ、いや、その、実験段階には多々ありますが、これは完成品なので大丈夫です」 「このリボンが?」 「はい!」 いぶかしむナミちゃんとニコニコと微笑むビビ王女。 けど、おれにもナミちゃんの目の前にあるのはただのリボンにしか見えなかった。 つづく 『ナミちゃんのリボン2』へ |