『頭が痛い……久しぶりに感じる頭痛にとことんまいる。
 
 風邪のせいだけかは……考えたくねェけどよ』







10 その部屋の鍵はかかっていない
(ゾロ誕アンケート第一位「姉弟」)










「義姉さん……なにか口にいれないと治らないぜ」

 自分のことは棚にあげてゾロはナミの寝ている二階に声をかけた。

 壁掛け時計を見ると時刻は6時をまわったところで、丁度よい時間にお粥ができあがったことに満足した。

「義姉さん……粥食べろよ」
 
「…………」

 相変わらず返答はない。

 手間のかかる大人だといって、ゾロはお粥をのせたぼんを持って階段をあがった。

「義姉さん廊下に置いておくから」

 顔を合わせ辛いのはお互いさまで、サンジの彼女発言からまともに話していない。

 だからナミは寝た振りで通しているのだろう、とゾロはそう思った。

 フラフラする頭を支えるように壁に頭をあずけながら階段を降りる。

「早く寝るか……」

 階段を降りきったとき、カギのかけ忘れた玄関に気がついた。

「危ねェな……っておれか閉め忘れたのか」

 無用心だな、とぼやきつつカギを閉めた。

「…………」

 違和感に気づく。

 なにか足りない。

 毎日見ている玄関に、なにか足りないのだ。

「…………」

「…………」

 飾ってある絵はいつもの場所に飾ってある。

 靴箱の上には観葉植物が置いてあるし、義姉さんが持ち込んだ人形も鎮座している。

 傘立てだって予備の傘入れて5本あるし。

 靴だって……
 
「そうか――義姉さんの靴ねェ!」

 義姉さんは寝ているのではなくまだ家に帰ってきていないのだ。

 慌てて二階に駆けのぼりゾロは制服のポケットから携帯電話をとりだした。

 ナミの携帯番号をもどかしそうに押していく。


 病院に行っているには帰りが遅すぎる。ゾロよりも早く学校を出たはずなのに、まだ家に帰っていないということは――

(サンジのやつの所か?)

 ピ、ピ、ポ……。

 ボタンを押す手が止まった。

「…………メールにするか」

 一人で焦っても仕方ないと思いゾロはまずメールを入れることにした。





                     ◇◆◇





 携帯のメール着信が先ほどから途絶えることなく送られてくる。

『どこにいるんだ? 返事くれ』

 ナミはゾロからのメールだと見てとると先ほどから何度も繰り返しているように、返信せずに携帯を閉じた。

 メールが送られてくる回数からして、心配しているのがわかる。

(自分だけじゃなくって……ゾロまで疲れてたなんて。どうしてわからなかったのかしらね。姉として最低……弟の面倒も見れないなんて。それに心配までかけて)

 ほとほと自分が嫌になる。

 ナミは体がマヒしたようにその場から動けずにいた。

 ひんやりと夜風が身に堪える。

 けれどまるで自分にバツを与えるかのように動かなかい。

 着信を告げるメロディーが控えめに聞こえた。

 重苦しい気持ちになって、ナミは携帯の電源をきった。



 ナミが学校から家路に着く途中、神社の裏手にさびれた小さな公園があることに気づいた。

 砂場とブランコしかない。申し訳なさげ程度に電灯もあったが子供の姿もなく寂しい。

 まるで自分を待っていたような気がして、ナミは吸い寄せられるようにブランコに座った。


 
 時間が刻々と過ぎる。

 雲がゆっくりと動くのを目で追いながらキイキイとブランコが揺れるのに合わせて体を小さく動かす。

「……さぼちゃった」

 確かに悩んでいたことは事実だったが帰宅するほどでもなかった。ただロビンの鋭い目から逃げたかったのかもしれない。

「逃げれないのにね……」

 帰宅する生徒にも会わずホッとしていたが、いつまでもこうしてここにいても意味がないと思った。でも、ゾロには会ってどうすればいいのだろう。

 夕日が木々の間に沈むのを見て、寂しい電灯が灯るのを見てもナミは体を動かす気にはなれなかった。

 あたりは薄暗くなっている。

 心細くなって、時計を見ようとしたがあいにく腕時計を忘れたことに気づいた。携帯の電源を入れて時刻を見るともう夜遅い時刻をさしていた。





                     ◇◆◇





「くそっ、夜中だぞ。メール届かない地下にでもいるのか」

 手には汗をかいて携帯を持つものすべる。

 先ほどから電話もかけているが全く繋がらない。

(神に祈ったことはねェが……誰でもいい。義姉さんに電話繋いでくれ)

 祈るような気持ちで今日何度目かとなる義姉の携帯番号を押した。



 暫くして

「…………はい、もしもし」

「義姉さん! いまどこだ? 今日早退したって聞いて……体大丈夫か?」

「ごめんなさい、大丈夫よ」

「もう夜遅いから帰ってこいよ……それかサンジに送ってもらえ」

「つっ……どうしてサンジ君なの?」

「彼氏だからだろ……夜危ねェし」

「……どうして……なのよ」

「なんだって?」

「構わないで、子供じゃないのよ!」

「な、義姉さ……」

 最後までいわせてもらえずに、ピッという音と共に電話が一方的に切れた。

「ナミ!」

 ゾロのがなる声が部屋にこだました。

 






おわり


TOPへ

第11話へ

*よかったら、感想お願いします☆





メールのタイトル :(ここにメールの題名があれば書いてください)

   内容確認画面を出さずに送信する




 ←素材お借りしてます(CELESTE BLUE:翠雨 様)