バカンス
(ゾロバン11カウントGET、東 沙夜様のリクエスト)





 夏の季節。太陽がさんさんと輝き、日光が肌をじりじりと焼いた。
 うみどり幼稚園の年長組は春の遠足が延期になり、夏の遠足となったのだった。夏ということもあり、大勢がいても人の邪魔になりにくい海が遠足先に決まったのだ。園長先生の知り合いのプライベート・ビーチなので、他の旅行客に気兼ねすることもない。遠浅なので、先生が園児の世話を見やすいことの利点も、遠足先が海に決まった要因であった。
 
 海に入っても、体が透けて見えるほど水が綺麗で、園児達はおおはしゃぎである。流れてくる海藻を拾う子もいれば、砂の城を作るのだと、何人かで寄り集まって海岸に陣取っている子もいた。
 
 いつも仲の良いルフィ達のグループは、はしゃぎすぎたのか、みながみな、パラソルの下で丸まって寝ていた。
 
 だが、パラソルによってできる日影はルフィには関係なさそうだ。体すべてが日向にでている。ロビンはそんなルフィの隣で、本を読みながらまどろんでいる。ウソップはルフィに蹴飛ばされ、寝ながら苦悶の表情がうかべていた。サンジはロビンとナミの間で、よほど嬉しいのか寝ているのにもかかわらず、にやあ〜と顔に締りがなかった。ゾロは先ほどから、すでに泳ぎながら寝ていた。その様子を見かねて、ナミが首根っこを掴みパラソルの日影の所まで連れていったのだ。

「しょうがないわね……もう」と小言をもらしてはいたが、その顔は微笑んでいるようにも見えた。ビーチに向かってズルズルとゾロを引っ張っていたので、ナミの表情を海側にいる誰も見ることができなかったが。

 ゾロが抜けたことで、つられて眠くなってきたのだろうか。その他のメンバーもパラソルの下に集まって寝てしまった。一人が違うことを始めると、他の子もそれにならうのは子供がよくするパターンだ。

 ナミもゾロをパラソルの前まで連れていったので疲れただろうか――わざと隣で寝てみたのかわからないが――添い寝の状態で眠ってしまったのだった。ナミの寝ている姿は、まるで猫が背を丸めているように、小さく丸まっていた。
 
 ねっとりと暑い。ゾロはそう思った。先ほどまで首ぎりぎりまで水に浸かっていて、海に漂っていた。――そのときには、冷たくて気持ち良かったのだ。なのにお腹のあたりが熱をもったかのように熱かった。

 すう……すう……と寝息が聞こえる。

 なんなんだ……と思い、上半身を持ち上げ、うっすらとゾロは目をあけた。
 
「うさぎ?! …………ん? んなっ! な、な、ナミ!」

 うさぎさんが寝ていた。いや、よく見ればうさぎさんのキグルミを着たナミだったが。いつの間にかゾロの腹のあたりで丸まって寝ていたようだ。うさぎの格好してるから、オレの腹が熱かったんだな……とゾロは一人納得した。だが、ふと思う。ゾロの眠る前の記憶は、海に浸かっていたことしかない。なぜナミがうさぎの格好で寝ているのだろう? 熱くないのか? なんで自分の腹で寝ているのだ? い、いや、それよりいつ海から上がったっけ? 

 悩める子ゾロ5歳。悩む時期であった。

 もんもんと口にだして悩むゾロの目が、次第にぐるぐると渦を巻いてきたころ――

「ん? ゾロ?」

 うさぎさんナミが目を覚ます。ゾロの独り事が、ぶつぶつと大きかったのだろう。

 まだ頭がぼーっとしてしているのだろうと思ったが、ゾロはナミに質問をぶつけた。

「ナミ! その格好どうしたんだ?」

「は? ゾロも着てるじゃない」

 ナミのその言葉に、ゾロは目線を下に下げる。ふさふさと柔らかそうなピンクの毛皮が瞳に映る。掌をみると、柔らかそうなニクキュウがあった。

 ゾロは思った。うさぎになったのか、と。でも……ナミのうさぎは白色でビキニまで着てるし。カワイイなァとも思った。

 ナミはしきりに自分の腹や背を何度も見るゾロに言葉を続ける。

「ねえ、どおしたの? ゾロ? おそろい嫌だった?」

「おそろい?」

「うん……。寝てたから、この後スイカ割りで、キグルミ着て目隠しして、割るのよ。だから、みんなに手伝ってもらってゾロに着せたの」

「ああ、そっか」

 そこに、ピィィィィィィィ――……と、集合を告げる笛の音が浜辺に響く。

「あ、集合時間だ。ほら、みんな起こして行くわよ。ゾロ!」

 ん、と頷きゾロはチラリとナミを盗み見た。先ほどは照れてあまり見れなかったが、チラリとだけでも見たいと思った。

 ぴょんと勢いよくゾロは起き上がった。

 にかっと笑い、ほらよとナミに手を差し出した。

 ナミもおずおずと手を伸ばす――

 
 
 

 ナミとゾロがてててっと手をつないで浜辺を駆けていった。

 







おわり













<あとがき>
11ゾロバン・リクエスト絵の小説おまけでした。押しつけともいう(汗)
初めてリクエストを頂いたということもあって、歓喜して書かせてもらいました。
リクエスト有り難うございました。